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言語サービスプロバイダー:翻訳だけにとどまらない、企業のグローバリゼーションを支える陰の立役者

2022.01.05

言語Aで書かれた文書を言語Bへと変換する場合、多くの人が翻訳者または翻訳会社へその翻訳を依頼することになります。
しかし、翻訳の対象が動画やウェブサイト、またはソフトウェアである場合はどうでしょうか?単に言語を変換するだけではなく、きれいなレイアウトを施し、字幕と吹き替えを付けて、翻訳文をウェブサイトやソフトウェアへと組み込む場合はどうでしょうか?また、仕上がった翻訳文の意味が正確である以外にも、政府機関の定める規定に合致している必要があったり、企業における法務、IT、開発などの部門やチームのニーズを満たしている必要がある場合は、どうしたらよいのでしょうか?
翻訳、認証機関、グラフィックデザイン、動画編集、ウェブサイト構築などの業者のリストをインターネットで検索するとともに、それらの企業と内部の部署間におけるコミュニケーションを円滑にする方法を模索していますか?「言語サービスプロバイダー」(language service provider)を利用することで、こうした負担を大幅に軽減することができます。
「言語の変換」は翻訳業界においてコアとなる概念であり、通訳と翻訳は、業界全体における基礎となります。しかしながら、20世紀後半以降、科学技術やコミュニケーションの手段が進化したことに伴い、世界中の人々が触れるコンテンツはますます多様化しています。企業の国際的な関わり合いにおけるニーズはより複雑さを増し、コミュニケーションにはさらなる精細さが求められます。世界中の多くの翻訳会社は早くからこの傾向を察知しており、そのサービスを次々と改善するとともに、より多様化かつ洗練された包括的ソリューションを提供し、プロジェクトにおける品質を高め、顧客の負担を軽減しています。
1990年代以降、「翻訳業界」は「言語サービス業界」(language services industry)へと徐々に拡大していき、翻訳会社は「言語サービスプロバイダー」へとその姿を変えました。さまざまな言語や文化に関連したサービスが次第に翻訳業界に取り込まれたり、翻訳サービスと組み合わさることで、現在の言語サービス業界のあり方へと発展を遂げました。
それでは、通訳と翻訳以外に、言語サービスプロバイダーが提供するサービスにはどのようなものがあるのでしょうか?また、プロジェクトを言語サービスプロバイダーに任せるメリットは何でしょうか?

言語サービスにはどのようなものがあるのか?

圖片來源:Common Sense Advisory, Inc., “The Language Services Market: 2018”, 2018.

上の図は、全世界における言語サービス業界の独立系市場調査機関、CSA Research(旧名称:Common Sense Advisory)が発表した報告から抜粋したものです。この図には、言語サービス業界が提供する各サービス項目と収益の割合が示されています。

  1. 最も大きな割合を占めるのが「翻訳」(translation)であり、多くの翻訳会社や言語サービスプロバイダーにとってメインとなるサービス項目です。
  2. 次に大きな割合を占めるのが「通訳」(interpreting)であり、通訳の進行方法によって、同時通訳(simultaneous interpreting)と逐次通訳(consecutive interpreting)に分けられます。上の図では、コミュニケーションの手段に応じて、その場での通訳、電話での通訳、会議での通訳、リモートによるビデオ通話での通訳などの項目へと、さらに細かく分けられています。
  3. 文書を翻訳した後で、組版、製図を行う場合は、「デスクトップ・パブリッシング」(desktop publishing)、または「グラフィックデザイン」(graphic design)が必要となります。
  4. 原文が動画に含まれるのであれば、翻訳した後で「字幕付け」(subtitling)、「吹き替え」(dubbing)、または「ナレーション」(narration/voice-over)が必要となる場合があります。元の動画にスクリプトがない場合(例:会議やインタビューの録画)、翻訳をする前に、文字を一語一語書き起こす「トランスクリプション」(transcription)のサービスが必要となります。
  5. 企業は、ウェブサイトを通じて世界中の顧客に接する必要があります。また、ソフトウェアやゲームの開発者およびパブリッシャーは、さまざまな場所のプレイヤーやユーザーに接することを望んでいます。従来の文書における翻訳と比べると、ウェブサイト、ソフトウェア、ゲーム、モバイルデバイスなどの媒体において翻訳を表示する手段は、さまざまな場所のユーザーが持つ文章を読む習慣や操作上の習慣とより密接に関連しています。そのため、これら媒体の「ローカライゼーション/ローカリゼーション」(localization)、グローバリゼーション(globalization)および「国際化」(internationalization)のニーズに応える翻訳やテストを行うサービスが存在しています。
  6. 特定の種類の文章を翻訳する場合において(例:マーケティングや創作に関した文書)、原文の語義に相当する翻訳だけを行い、その異なる文化的背景に注意を払わないのであれば、原文を読むことで本来引き起こされる共鳴を、翻訳文において呼び起こすことができなくなってしまいます。このような種類の言語変換作業においては、翻訳者は原文を理解したうえで、改めて創作を行う必要があります。そのため、この作業は「トランスクリエーション」(transcreation)と呼ばれます。また、言語サービスプロバイダーは時として、現地のニーズに応える「コピーライティング」(copywriting)を顧客のために外国語のネイティブスピーカーに依頼し、ゼロから作成します。
  7. さらに一部の言語サービスプロバイダーは、デジタルマーケティングのニーズに応えるための「検索エンジン最適化」(SEO)を行い、グローバル市場における翻訳に向けたキーワードの研究に取り組んでいます。
  8. このほか、AIによる言語技術の発達に伴い、機械による翻訳の支援も開発されています。これにより、プロジェクトの進行を速めることができるほか、「機械翻訳ポストエディット」(machine translation post-editing、MTPE)ならびに「機械通訳」(machine interpreting)によって、人員不足を補うことも可能です。

CSA Researchの図に示されているもの以外にも、言語サービスプロバイダーが提供するサービスが数多く存在します。例えば、別の記事でご紹介した「言語資産管理」(language assets management)をはじめとし、顧客のために技術マニュアルやユーザーマニュアルを作成する「テクニカルライティング」(technical writing)、さまざまな市場に向けた多言語による「世論分析」(public opinion analysis)などのサービスです。

企業にはなぜ言語サービスプロバイダーが必要なのか?

デジタル時代のグローバリゼーションにおけるプロジェクトは巨大かつ複雑。それらの統合は往々にして時間と精神を消耗させる。(Photo by bruce mars on Unsplash)

多少の手間をかけて検索を行うならば、上述したサービスを提供するプロバイダーをそれぞれ探し出すことができることでしょう。一部の企業またはその部署は、翻訳者および翻訳会社に翻訳を依頼すると同時に、その他の業者に連絡をとり、デザイン、組版、字幕付け、マーケティング、ならびに異なる言語でのウェブサイトおよびソフトウェアの構築を行うとともに、自らがそのプロジェクトを管理するという傾向があります。
特定のサービス項目において、すでに信頼を置いているパートナーがいるのであれば、それらのパートナーと協力することで安心感を得られる場合があります。しかし、複数の業者と協力する場合においては、それぞれの業者が抱えるタスクが、相互に影響を与えてしまう状況が起こりうる可能性があります。例えば、翻訳文の長さはユーザーインターフェース(UI)上での表示に影響を与えます。また、翻訳文の切れ目は、字幕の区切りに影響を与えることになります。もしくは、グラフィックデザイナーが選択した画像が、特定の地域の人々にマイナスな印象を与えてしまうという場合があります。このように、プロジェクトの過程において、非常に多くの細かい確認作業を繰り返し行う必要があり、企業の部署はそれらを統合するため、往々にして時間と精神を消耗してしまいます。
こうした場合において、言語サービスプロバイダーを利用することにより、大きなメリットを得ることができます。言語サービスプロバイダーとその言語のエキスパート、ならびに言語サービスプロバイダーと提携を結ぶ業者は、早くから企業のグローバリゼーションおよびローカライゼーションにおけるさまざまなニーズについて熟知しています。そして、プロジェクトの前期においての言語変換から、プロジェクトの後期においての製作ならびに検収に至るまで、顧客のニーズに応じた完成品を仕上げることを目標と定め、そのあらゆる細部にまで注意を行き届かせるとともに、言語と文化の側面における見解を適宜提供しています。
さらに、成熟した言語サービスプロバイダーは、専門的な翻訳技術チームを有し、プロジェクト初期の交渉の段階においてそれぞれのプロジェクを予め分析し、カスタマイズされたサービス項目の組み合わせと技術の応用に関する提案を行うことで(例:言語資産の応用、翻訳および開発プロセスにおける自動化との連携)、より迅速かつスムーズなプロジェクトの進行を実現します。
また、「プロジェクトマネジメント」(project management)のサービスによって、各段階が1つにつながります。優れた言語サービスプロバイダーのアカウントマネージャーおよびプロジェクトマネージャーは、それぞれのプロジェクトに最適となるプロセスを選択することで、プロジェクトの分析、プロジェクト全体の統一、言語の変換、プロジェクトの後期においての製作ならびに検収といった各段階のスムーズな進行を実現し、顧客がそのまま使用できる完成品を提供することで、気軽で快適な、ワンストップによる顧客体験を届けることができます。
Linguitronicsは、お客様に完全なソリューションを提供する「言語サービスプロバイダー」です。1993年の設立以来、Linguitronicsは言語サービスプロバイダーとして、通訳および翻訳を基礎とした A-to-Z™ソリューションを開発し続けています。現在、フォーチュン500に名を連ねるたくさんの大企業の言語サービスパートナーとして信頼を獲得しているほか、世界の言語サービスプロバイダートップ100にランクインされています。
グローバリゼーションの道のりにおいて、陰でそれを支える、信頼できるパートナーをお探しの場合は、ぜひLinguitronicsまでご連絡ください。当社より、言語サービスに関する専門的なご提案をさせていただきます。


著者|Yahan Chang

Yahan Changは、2020年よりLinguitronics, Co., Ltd.のブランド戦略コミュニケーションマネージャーを担当し、同社のブランドPRおよびマーケティング業務に従事しています。また、これまでLinguitronicsのプロジェクト管理、リソース管理、翻訳レビュー担当チームのトレーニングなどの業務に勤しんできた経歴を有します。Yahanは他にも、英語とフランス語の翻訳者として、4年間にわたり書籍の出版および編集を経験しています。

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