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言語資産の管理:グローバリゼーションにおける品質に必須な資産管理能力

2023.06.13

「言語資産:グローバリゼーションに必要とされるデジタル資産」の記事では、言語資産を財産に例え表しています。そして、より詳しくみてみると、両者には多くの類似点があることがわかります。

財産を着実に増やしたい、もしくはお金がお金を生み出す状態を創り出したいと思う場合、財産管理や投資におけるテクニックおよび良い習慣が必要であり、単に口座に預金をするだけでは不十分です。それと同様に、言語資産の効果を確実に発揮したい場合には、資料をただ集めるだけではなく、これらリソースを適切に管理していく必要があります。誤った投資方法を用いるのと同じように、言語資産の管理方法が正しくなければ、積み上げてきたものを失ってしまう可能性があるのです。

グローバリゼーションの過程では、企業がその翻訳ニーズを解決するため自社の翻訳チームを編成する場合においても、または翻訳作業を外部委託する場合においても、翻訳担当チームが言語資産を適切に管理しているかどうかについて、特に注意を払う必要があります。

言語資産の管理は、資産管理のように慎重に行う。(Photo by Tech Daily on Unsplash)

なぜ言語資産の管理が必要なのか

翻訳において言語資産を適切に管理することは、翻訳の品質および効率の向上だけではなく、コストの低減につながります。文章を重複して修正する時間、重複して翻訳をするコスト、資料を重複して参考にする時間などを、節減することが可能となります。

翻訳担当チームが言語資産を適切に管理することで、パートナー企業や顧客の負担を大幅に減らすことができます。近年、不適切な言語資産の管理が招いた論争がいくつか生じています。例えば、

  1. カナダの翻訳局(Translation Bureau)と協力しているいくつかの言語サービスプロバイダーは、翻訳局が品質の低いTMを提供したことにより、その修正のため多大な労力を費やす必要があったことから、団結して裁判所に申し立てを行いました。
  2. トリップアドバイザーは以前、COVID-19という用語の翻訳をめぐり、中国の一部ユーザーコミュニティから抗議を受けたことがありました。後に、翻訳を修正する旨を示した謝罪文が再び物議を醸し、両者は納得のいく結論に達していません(MediumでのCamilleによる用語管理の問題に対する分析をご覧ください)。

グローバリゼーションへの道のりにおいて、いかにして現地の習慣やニーズに相応しいユーザー体験を創造していくかは、非常に重要な課題となります。細心の注意を払い対処していくことでのみ、それぞれの場所における利害関係者の思いに近づき、効率的にコミュニケーションの目的を達成できるほか、不必要な損失を避けることができます。

この観点から見ると、言語資産の管理は付加価値的な効果があるだけではなく、必須なものであるといえます。

Linguitronicsはいかにして言語資産を管理するのか

言語資産の管理は財産管理に似ており、継続的かつ規律のとれたものでなければならず、専門のスタッフによって管理される必要があります。1993年設立のLinguitronicsは、設立初期から言語資産の管理規準を策定しています。2016年には、言語資産の管理を専門的に行うチームを創設し、同社におけるすべての言語資産の管理を担当しています。

このチームの主な目的は以下のとおりです。

翻訳メモリ(TM)、用語集(Glossaries)、用語ベース(TB)管理のシステム化を図り、翻訳プロジェクトの開始前、進行中、終了後の各段階において、必要となる言語データを提供し、当該プロジェクトならびに後続のプロジェクトの品質と一貫性を高めることでプロジェクトの効率を向上し、制作コストを削減します。

Linguitronicsの言語資産管理チームが担う主な役割は以下のとおりです。

  1. TM/TBの相談と制作:翻訳プロジェクトの開始前に、関連する資料(以前の翻訳、参考用語集など)を集め、規準に基づいてプロジェクトで使用するTM/TBを作成します。TM/TBの相談と制作を行うことは、プロジェクトにおける翻訳の品質を高めたり、用語やフレーズの一貫性を保障することに非常に役立ちます。
  2. TM/TBのメンテナンスと整理:翻訳プロジェクトの終了後、規準に基づいて翻訳者およびレビュアーが追加したTM/TBの内容を確認するとともに、将来のプロジェクトでの活用のため、対応するデータベースへと保存します。厳格なTM/TBのメンテナンスと整理によって、前述の「TM/TBの相談と制作」のスピードを速めることができます。
  3. 顧客からのフィードバックへの対応:翻訳レビューチームと協力し、翻訳文書に対する顧客からのフィードバックを確認するとともに、ニーズに対応するようTM/TBを更新し、将来の翻訳プロジェクトにおいて顧客のニーズに応えることを確約するほか、後続のプロジェクトにおける顧客の検収までの時間を削減します。
  4. CATツールテクニカルサポート:翻訳プロジェクトにおけるニーズに対応するため、言語資産と各種ツールを組み合わせて使用することにより、言語資産の適用による効果を高めます。
  5. TM/TB/CATツールのトレーニングと導入:社内チームおよび外部翻訳者をトレーニングし、関連するスタッフがツールを通じてより効率的に言語資産を運用することで、翻訳の品質および効率を高められるようにサポートします。
  6. 械翻訳(MT)および翻訳管理システム(TMS)の実践的研究:最新の産業技術の発展をしっかりと捉え、言語資産の管理方法をタイムリーに調整し、徹底した言語資産の適用によって、最大の利益を生み出します。

「正確かつ迅速に」は、Linguitronicsが提供する翻訳およびローカライゼーションサービスのコア理念であり、当社にとっての言語資産管理とは、常に継続的に発展していかなければならない、欠かすことのできないスキルです。

Linguitronicsは、社内チームの翻訳によって生み出された言語資産の管理だけではなく、翻訳プロジェクトにおいて、企業が既に有する過去の翻訳文、用語集などの資料に対しての提案を行い、顧客がグローバルに展開していくうえで、これらの資料をどう適用し、有用な言語資産へと変換していくかについて、評価を行うサポートをします。

言語文書の資料を再整理し、適切な管理方法で言語資産を蓄え、グローバリゼーションにおいて、言語資産がもたらす最大の利益を実現したいとご希望の場合は、ぜひ当社までお問い合わせください。

 

著者 |Camille Xu & Yahan Chang

Camille Xuは、2016年よりLinguitronics, Co., Ltd.の翻訳技術ディレクターを担当し、言語サービス、翻訳管理、翻訳技術の研究に従事しています。Camilleは、豊富なプロジェクト管理経験に加え、翻訳環境ツールなどの翻訳技術に関するトレーニングやコンサルティングを経験しています。また、ITおよびライフサイエンスの分野において、9年を超える翻訳経験を有します。

Yahan Changは、2020年よりLinguitronics, Co., Ltd.のブランド戦略コミュニケーションマネージャーを担当し、同社のブランドPRおよびマーケティング業務に従事しています。また、これまでLinguitronicsのプロジェクト管理、リソース管理、翻訳レビュー担当チームのトレーニングなどの業務に勤しんできた経歴を有します。Yahanは他にも、英語とフランス語の翻訳者として、4年間にわたり書籍の出版および編集を経験しています。

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